老人ホーム選び  ~ 医療行為 看護師② ~

 先日に引き続き、施設医療の質、今回は施設看護師の質について寄稿していきます。看護師のキャリアには暗黙の業界ルールがあります。

その一つとして、新卒看護師は、大病院で最低1年間勤続すべきだという暗黙ルールです。

一年間耐えることができない看護師は、医療者としての順調なキャリアルートに戻ることは大変困難な事がつきまといます。

就職先の大病院によっては、どんなに就業困難な状況が起こりえようとも、院内の環境はあまり考慮してもらえず、最低1年間就業できたかできなかったかで判断されます。

最低1年をクリアできなかった看護師は、烙印といってもよいような印象で、大病院に再度就職することが困難な状況になります。

医療手技が未成熟なまま、手技を獲得する大きな機会を失うことになります。

先端医療手技が獲得しにくくなるので、他の選択肢として施設看護師になるという選択が発生する人が多いです。

学生時代、将来医療の組織ルールに馴染まないと判断された学生は、留年させられる率が高いと思います。また、何かの理由で退学になる確率も高いと感じます。

就職してからも、医療の組織ルールに馴染まない看護師は、外堀を埋められるように退職勧奨がかけられる確率が高いと思います。

施設にくる若い看護師は、医療組織ルールに馴染まないと判断された人のセカンドキャリアといえるかもしれません。

ただし、福祉施設で医療手技を成長させることは困難なことが多いですので、医療付きの入居者様を取り扱うことも困難を伴います。

 

 次は、施設にくる看護師のもっとも多いパターンを書きます。

それは、50代・60代になってセカンドライフとして施設に求職活動をする看護師です。

若い時代、病院に在籍し医療に携わってきた看護師が、「そろそろ一息つきたいな」「夜勤もきつくなってきたし、年齢もあがってクリニックで雇われることも難しくなってきたので日勤専従で福祉施設に行こう」「施設での看護業務は、医療に比べたら楽だし、医療職が少ないので大切に扱われる傾向にある」

そういった動機で施設求職する方が非常に多いと思います。やはり、施設医療はセカンドキャリアです。

ここで後々トラブルになりやすいのは、今までより少し楽をしたいという気持ちが求職者の中にある場合です。

看護師は、医療の仕事の全権を任せられることが多いです。それは、医療手技が誰でも行ってよいわけではなく、看護師でないと行ってはいけないと法律に位置付けられた業務独占の仕事だからです。

楽をしたいが動機にあり、その人しかできない業務がある、施設にいなければ運営できない。

この条件を揃うと、志に難がある人が施設内ではばを聞かせることが発生し、施設が荒れる原因になってしまうことがよくあります。

経験した専門科の手技はできるが、志に難があるパターンです。若くて挫折した看護師とはまた違うリスクが生じます。

 

 施設における医療専門職員の問題は、福祉を第1の選択肢として志していないにも関わらず、与えられた権限と志が不均衡になってしまう事から始まります。

教育の段階で、まずは医療者としてのスキルアップを目指すべきという事が推奨され、福祉についてはあまり重要視されないことが原因の一旦になっています。

その結果、計らずとも医療の下に福祉があるという感覚を看護師に植え付けるプログラムになってしまっています。

だから、福祉の医療者の質はあまり上がりませんし、看護師のセカンドキャリアとしての受け皿的な見られ方は変わることがありません。

福祉業界は医療業界より政治的な力が弱く、怖くてこの問題を公に口にする人もいないので、医療業界から見た福祉業界の隷属的な看護師の感覚は変わらないでしょう。

福祉業界にくる看護師は、一生懸命医療業界で働いた後のセカンドキャリアの立ち位置で求職する人が多いです。

このことが、運営における長期的な医療依存受入を安定化することに困難にしています。

このことを踏まえつつセカンドキャリアとしての施設医療体制の続きを明日以降寄稿致します。