老人ホーム選び ~ 特別養護老人ホーム④ ~

特別養護老人ホーム

 

入院時の退所要件に注意②

入院による強制退去を少なくする方法は、シンプルです。

解決方法は、特別養護老人ホームの基本介護報酬をおとし、看取りの介護報酬を減収した分の基本介護報酬を上回る形で全体の介護報酬を上昇させれば良いです。

ただし、看取りの介護報酬を上乗せさせるだけですと、故意に入所者様を看取りにもっていく倫理観が欠如した状況が生まれかねません。

特別養護老人ホームの経営安定性を2軸設けます。

ひとつは、長期入所者割合増加への介護報酬。

もうひとつは、ベッド回転数と看取り介護への介護報酬。

このふたつを片方でも施設存続が成り立つし、ベッド回転数と看取りの方によればやや介護報酬が上回るという仕組みにします。

行政は、どちらを重視すべき地域なのか人口動態の統計から施設が寄せるべき方向を介護報酬の偏りによってコントロールします。地域事情による特色が介護報酬に反映される仕組みですので、保険者の意見が必要になりますし、特別養護老人ホームの管轄が保険者に移行することも想定します。

この方法ですと、特別養護老人ホームに対する介護報酬の総量はさして変わりませんし、地域における長期入所が必要な時期なのか・看取り施設が必要な時期なのか・折衷の中道路線が必要なのかという地域ニーズをくみ取りフレキシブルに変化させることができます。

 

行政は、まだ団塊の世代の対応シフトのまま施設数を増やす方向の介護報酬を維持する姿勢で継続しています。日本の高齢人口の増大がクローズアップされ始めて50年以上経ちます。今50年間続けてきた課題対処への転換期が訪れています。

もう高齢者の人口そのものは増えないのです。高齢者人口はピークアウトし、今まで作った箱もの施設の改良に力を回す時を迎えています。

日本の老人福祉は、50年間続いた高齢人口増大への対応が、終わりの始まりの時代を迎えています。新しい方向の考え方が必要な時代になると認識すべき時期が到来しています。

(高齢者人口の増大は終わりを迎えていますが、少子化問題は終わっていません。労働生産人口の減少と高齢者を支える労働力世代が少ないアンバランス問題は続いています)

 

今現時点でとる施策は、特別養護老人ホームの役割を完全に終の住処として介護報酬上で位置づけることです。特別養護老人ホームには入所時から看取りの考えをもった入所者・家族が集まりやすいです。看取り前提の施設だと宣言しやすい状況を作り入所者を集める事で、看取りを考えない人は特別養護老人ホームとは別の選択肢を検討するようになります。

現時点での人口動態を考えると、まだ長期入所をある程度堅持しつつ看取りの回転が必要な地域が多いでしょう。

特別養護老人ホームから病院入院するという事態も緩和され、病院のベッドの回転も多少楽になります。

そもそも特別養護老人ホームには、現時点でも終の住処として捉えている人が多い土壌ですから、介護報酬の方向性をもう少し看取り側に寄せるだけで名実ともに簡単にそのような位置づけの施設になるでしょう。

今までより重介護の入所者が増加傾向になるでしょうから、特別養護老人ホームに往診する場合の診療報酬を少し上げ、地方の医師不足を緩和させるとともに、薬剤によるコントロール・看取りの際の診断に医師が関わりやすいよう促します。

施設側への施策として、重介護の入所者を回すために今より少し人員を多く配置させる必要がでてくるかもしれません。看護師または介護士の人員基準を少し厳しくし、介護報酬を上げるかまたは法人に対する人員付則をつけて税制優遇を更に強化します。

(現在のところ、ICTの活用やロボットの活用は有効な人員不足の解消方法になっていません。理由は、現場の技術者不足と倫理的な配慮への啓蒙不足です。パソコンやロボットの活用で楽になったらいいなという願望に近い施策です。継続的で大きな財政投資の実績がない段階で、願望に頼り人員不足解消をするべきという施策を走らせると現場が崩壊する可能性があります。ICTやロボットは未来の為にとっておくお試し施策です。)

特別養護老人ホームの改革は、少子高齢化・労働生産人口減少といった社会問題解決の一助になれる可能性を秘めています。その可能性は、今ある制度を少し変えればできるくらいの政策的にみれば小さなテコ入れで済みます。

 

最後に看取りを行う施設として特別養護老人ホームに上記の政策誘導した場合のメリットを書きます。

・入院する場合、退所へ追い込まれるリスクが低下する

・入院による介護難民が減少する

 (生産労働人口が微増する)

・病院のベッドが高齢者で埋まっている状態を緩和できる

 (高齢者が多い地方になればなるほど効果が期待できる)

・労働者世代が治療を受けやすい状況を作り、労働生産効率にプラス効果が期待できる

・他施設との役割分担の違いがよりユーザーにわかりやすくなる