<看取り後編>その②

 こんにちはゼイアースです。本日は口から栄養や水分がとれなくなり、看取りの決断をすると、いったいどのような流れの業務が発生するか書いていこうと思います。一般的なルートのひとつという内容であって、すべての看取りが今から書くような内容にあてはまるわけではない事をご承知おき下さい。

 ご家族様(本人)が施設で看取りの意思を示されたら、必ず医師を巻き込みます。看取りが近くなってきたなと施設職員が感じたら、一番最初に病状説明を医師に依頼する時もあります。ほとんどの場合、施設は、看取りの同意をとる前に医師と相談している場合が多いです。本人様の状況変化が起こっている途中、例えば少しづず食事量が減ったり、何らかの末期的な病状になっている時点で、最後の時を意識した話しや空気感を施設と医師で共有しあいます。施設で看取るのか、救急搬送するのかといった内容を、なだらかに先に下話をつけていることが多いです。かくして、家族様が看取りの決断後、看取りの同意書にサインをいただき、医師と連携して看取りに向かいます。施設で看取りを行う場合、医師と連携することが、非常に重要なポイントになっています。医師との連携が最も重要になってくる場面は、最後の時を迎えた後でしょう。最後の時を迎えたら、医師を呼び、死亡診断書に【老衰】【自然死】などといった内容を記載していただきます。この記載がなかった場合、【変死】扱いになり司法解剖に回され、事件性がなかったか医学的に調べられます。警察から事情聴取を受け、やはり事件性がないか職員やご家族様が取り調べを受けます。ようやく、人生の最後の時を迎えたのに、司法解剖で傷つけられたり、残された家族や職員が警察の方から事情聴取を受けたくないものです。それこそ、段取りの悪さで、最後の時に対する冒とくと受け取られたり、心情の悪化が別のトラブルを掘り起こされ訴訟に発展する可能性もあります。同じ最後を迎えるにあたって、医師が診断を下すのとそうでないのは、天と地ほどその後の対応が分かれます。施設は、看取りの入り口にたった時点で、医師と最後の時が近づいているということを必ず共有しあいましょう。医師は、最後の時に施設に往診して下さる体制をとっている方を選びましょう。福祉施設では、あらかじめ対応をとっていただける医師と契約(連携)しているのが一般的です。

 さて、看取りに向かっている本人様の話しをしていきます。福祉施設で生命維持に必要な栄養・水分が口からとれなくなると、意識のレベルが低下します。原因は脱水症状になることが多いです。もちろん、他の病気が原因で意識レベルの変化があることもあります。水分がとれなくなると思考は正常にできなくなります。健康な人でも、水分不足で思考力が低下した場合、水分不足で水分が必要だという事も思いつくことができなくなることがあるので注意しましょう。意識が朦朧としている中で、認知症や元々もっている病気や気性が急激に変化や悪化することもあります。ですので、福祉施設で看取りの入り口に立つと、活動的な毎日を過ごす事よりも、日々できるだけ安楽に過ごす事を目標に切り替えることが多いです。体力や思考力が弱って最後の時を迎えようとしている時に、日々の活動量を上げることを目標にすることは少ないです。意識レベルが低下しつつある方に、無理な負担をかけないようお部屋で過ごしていただく事が多いです。一方で、福祉施設全体の人員的な事もあり、お部屋で過ごす方につきっきりで介護することは困難であることが多いです。清潔を保つ(清拭やおむつ交換)、少しでも水を口に含んでもらう(口渇感の緩和)といった事が主な業務になります。1対1のケアを行い、専属職員を対応させることができる施設はほとんどないのではないどしょうか。もちろん、福祉施設全体業務を見渡した時に、職員人数か過剰になっている時もありますので、たまたま、職員を1対1のケアに回ることができる職員状況の時もあるでしょう。しかし、それはあくまで利用者様の全体的な介護量と職員配置の相対的な関係で一時的に手厚いケアが可能な状況があることがほとんどです。つまり、入居(入所)契約の時に確約事項として、看取り状態になったら1対1の手厚いケアを文書取り交わしていなければ手厚い看取りは期待しない方が良いです。仮に、この契約を行う施設の運営はどうなるかというと、施設内で看取りの方が3人でてきたら、24時間の介護をローテションで回すと考えて、プラスアルファで10人程度の余剰職員を抱えていないと難しいでしょう。看取りの方がでたら、いきなり求人採用して戦力にすることはむずかしいですから、ある程度、施設が余剰人員を抱え続ける必要があります。いつ訪れるとも分からない看取りに対して、巨大な余剰人員を抱え続ける事は困難です。一時的な派遣や短期契約・巨大組織での保留人員で手厚いケア用のサービスを確保し続けることができるか、検討することができるくらいのところでしょう。ただし、そういったサービスができるか検討できたとしても、借りてくる先の人員の状況次第であり、結局、入居(入所)時に確約できるものではないと考えられます。ですので、福祉施設では基本的に経営的に存続可能な職員人数で回す選択が大きくなります。一般的に言われているラインは入居(入所)率85%~95%(施設規模や償却状況で許容稼働率が上下します)で存続可能になると言われるラインを保ちつつ、職員人数は月計算で職員一人につき利用者1.5人~3人以内です(常勤換算方法という計算法があるのですが、職員の詳細な労働データがないと作成できないので、感覚としては日に職員1人に対して、利用者1.5人~3人以下であることが多いです)。この数値を無視することができるのは、赤字覚悟で運営母体が赤字補填し続ける場合です。単独採算を考えていない施設は、逆に停滞していることもあるので別の意味で気をつける必要があるでしょう。介護保険制度は手厚いケアを保障していないということが現実です。看取りにかける人数も制度の中で施設が他利用者様の生活を回せる業務の中で、業務に組み込んで差し支えない人数が看取りにさかれるというのが現実です。そして、さかれる人数は他の利用者の食事や清潔保持、余暇時間の充実、医療面での処置等が問題なくまわる人数の中でやりくりされます。

 自室で安楽に過ごすということは、床ずれ(褥瘡)ができないように体位交換(自動体交エアマットが導入されていれば体位交換もほとんど必要ない)、清拭、おむつ交換が最低限のケアになることが多いです。これらを業務におとしこむと、業務上、平均2時間~6時間(口喝へのケアと寂しさへのケア頻度は考慮にいれていない)に1回くらいの頻度で本人様に最低限かかわる間隔になるでしょう。もちろん、それ以上関わる事も理想的に可能ですが、手厚い看取りを契約していない限りは、現実的にこれ以上を期待しない方が良いでしょう。看取りに向かう本人様への対応頻度の実態は、概ねこれ以下くらいと理解した方が良いです。この頻度を是とするか否とするかは家族によって様々だと思います。ただ、施設の取り決めた頻度より高頻度の関わりを職員に求めるのであれば交渉するのも良いですが、あまりに強弁に要望するのであれば、自宅で看取りをする覚悟も必要になるかもしれません。

 看取りに慣れた施設であればあるほど、看取りに対して通常運転です。続きは明日〈看取り後編その③〉に書きます。まさかの連続連載になってしまいました^_^;長くなり申し訳ございません。