老人ホーム選び ~ 老人保健施設⑯ ~

老人保健施設

~病院併設の老人保健施設と単独の老人保健施設③~

 

昨日に引き続き、単独型老人保健施設の特徴にしやすいリハビリについて寄稿致します。

 

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老人保健施設がリハビリを特化しているかどうか判断するポイントは、理学療法士作業療法士言語聴覚士の人数で確認できます。

リハビリを特化していく上で、リハビリスタッフの人数は増加させる必要にながあります。人数の多さは施設規模によりますが、リハビリを特化していく上で少なくとも資格者が1人や2人ではなくなります。

理学療法士作業療法士言語聴覚士の人数確認は、見学時に聞くか玄関に張り出しているであろう重要事項説明書を確認する、または介護サービス情報公表システムで検索するとよいでしょう。

入所者の定員人数100人以下の老人保健施設で、3人以上理学療法士作業療法士言語聴覚士がいれば、老人保健施設としてリハビリに特化しようという意思が垣間見えます。

リハビリ資格者3人以上は、専従で行っていなくとも良いと判断します。何故なら、リハビリを特化しようと考えるなら、訪問(通所)リハビリテーションを併設し、入所者様が老人保健施設を退所後もリハビリテーションの関わりをもてるようにと考えることは至極当然の流れだからです。

リハビリ職員を退所後も関りを持たせることで、退所者の機能維持・向上を図り、タイミングが来た時に老人保健施設への再入所をすすめます。一度退所したとしても、関わりが終わりになるわけではない事は、退所者にとっても安心ポイントになります。

 

リハビリ職員はリハビリ職員は兼務でよいので、入所者100未満の利用者に対し3人以上在籍しているか、これがリハビリ特化しようとした施設の指標です。

施設運営として、リハビリ職員に人件費(固定費)をかけて売りポイントとして成長させようとしている方針を感じ取れます。

 

リハビリを特化させていくことは、単独型老人保健施設の専売特許ではありません。病院併設型老人保健施設に勿論可能なことです。

ですので、病院併設型老人保健施設もリハビリ職員を多数在籍させて力を入れている施設はあります。

他方、病院併設型老人保健施設は、病院から入所者が入ってくる超強力な営業ツールを既にもっているのでリハビリを特化していなくてもある程度運営しやすいです。

複数のリハビリ職員に人件費(固定費)を支払い続けることは、施設の収益を減少させる方向へ働きます。病院から入所者が来てある程度安泰であるのに、更に他に何かをしようというのは、運営の強い意志が必要です。

単独型老人保健施設は売りポイントを作り出さなければ存続に関わります。リハビリを特化させていくにしても、背水の陣で開発を進める必要があります。失敗すれば大きなダメージになります。

病院併設型老人保健施設と単独型老人保健施設とでは、置かれている運営の状況が違うので、リハビリを特化すると決めたら、決めた時の熱量や推進力に差が表れやすいです。

 

 

次回の寄稿では、老人保健施設がリハビリを特色に選んだ時、医師がいるとどのようなメリットが生まれるのかを書いていきます。また、もうひとつの売りポイントになりえる 【 医療 】 についても触れていけたらと思います。

老人ホーム選び ~ 老人保健施設⑮ ~

老人保健施設

~病院併設の老人保健施設と単独の老人保健施設②~

 

 今回は単独で老人保健施設を設立開始した場合の施設特徴を寄稿致します。

単独型老人保健施設の前に、前回説明した病院併設型老人保健施設の特徴説明を簡単に振り返ります。

 

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病院併設型老人保健施設運営の特徴は、営業(施設が入所者促進のために行う努力)コストが大幅に低い。人員採用にかかるコストが低くなりやすいでした。

施設を運営する為の両輪といっても過言ではない2項目ですが、特に営業コストダウンの方の威力は絶大です。

病院が併設している老人保健施設は、他施設の経営と比べて運営しやすいといえるでしょう。

逆にいうと、老人保健施設を単独で設立すると営業努力と人員採用・マネジメントにかかるコストが、他施設と同じくらい必要といことになります。

病院併設型老人保健施設は、病院があるという大きな売りがありました。単独型老人保健施設には、病院があるという売りポイントはありません。

では、単独型老人保健施設は何を売りポイントにする(しやすい)のでしょうか。

 

キーワードは、【  リハビリ  】 と 【医療】 です。

 

リハビリ(リハビリテーション)は、老人保健施設と相性の良いコンテンツです。

老人保健施設のリハビリ職員の配置基準は、理学療法士1人または作業療法士1人以上です。リハビリ職員の最低確保人数は決して多い施設とはいえません。

なぜ単独型老人保健施設の売りポイント(特色)にしやすいかというと

 

①リハビリニーズが高い入所者が集まりやすい

②医師がいる

 

以上2点です。

老人保健施設の本来の役割のひとつに、在宅復帰を目指す施設という位置づけがあります。これは行政から定められた施設の存在意義であり、老人保健施設が受け取る介護報酬上の仕組みにも組み込まれています。

老人保健施設には、病院で治療を終了した患者様や自宅で一時的に生活する事が困難になった方などが入所します。

病院から退院する患者様には、入院による治療生活で身体を動かす機会が減り筋力が減退してしまっている方が多くいらっしゃいます。

退院後、すぐに元の生活に戻るのが困難だからこそ、施設探しを始められます。しかし、心の中には元の生活に戻りたいという気持ちはがくすぶっている方が当たり前です。

そのような患者様が治療の次に目指すのは、元の生活に戻る為に筋力(関節稼働域や柔軟性も含む)を取り戻したいという願いが起こるのはしごく当然の流れです。

もとの状態にもどるかどうかは、その方々の病状次第である部分も多分に含まれますが、少なくとも元の生活場所に戻りたいと願う方は多いです。

そんな方々が在宅復帰を目指すための位置づけになっている施設が老人保健施設です。

つまり、老人保健施設は在宅復帰の為の施設という位置づけ上、リハビリを目指す入所申込者が多く集まりやすいのです。

営業努力をするのであれば、この層を取り込める施設整備を行うとかなり強みになります。

この層を取り込む為にリハビリノウハウを施設に取り入れて、リハビリを特化させ元の生活に戻る具体的な努力ができることを特色にしやすい土壌があります。

入所してもらう為に、リハビリという商品開発を行いやすい土壌を既にもっているのが、老人保健施設の特徴です。

在宅復帰を位置付けられた施設という土壌は、他の福祉施設にはない土壌です。

営業を行う上では、入所者様候補のニーズがリハビリだとわかっているという状況です。

 

次回は、老人保健施設がリハビリを特化させようとして、実施していることをどうやって入所希望者(家族)が判断するか寄稿致します。リハビリにおける医師の説明は次々回予定です。

老人ホーム選び ~ 老人保健施設⑭ ~

老人保健施設

~病院併設の老人保健施設と単独の老人保健施設①~

 

 もともと病院を経営していて、後から老人保健施設を立てた場合と何もないところから単独で老人保健施設を立てる場合では、設立の違いから違った特色になりやすいです。

その違いは、【集客方法】に起因した違いが特色として変化がでるといえます。

 

病院併設型の老人保健施設は、病院を持っている老人保健施設を意味します。

まず簡単に病院の説明をします。病院は入院ができます。誰が入院を決める権限が強いかというと医師です。

本人様でも家族様でもありません。入院に対する権限が濃淡で表せるとしたら、一番濃い権限を持っているのは医師です。

病院には、入院用のベッドがあります。入院用のベッドが空きっぱなしでは、病院経営が存続しません。

病院経営を存続させるために、ある程度のベッドを使用し続けていかなければなりません。

例えば、患者様がみな病状が落ち着いていてベッド稼働率0%の状態にできるかというと、答えはNOです。

ベッド稼働率が低いと病院は潰れてしまいます。

同じような病状であっても、ベッド稼働率によって入院を勧められたり、その反対に入院を拒まれたりすることはよくあります。

病院経営の大きな仕事のひとつにベッド稼働率コントロールがあります。

患者様も医師に入院の必要があると言われれば、入院した方が良いと思うのが当たり前です。

もちろん、患者様の意思も介在しますし、医師がひとりで100%決めれる訳ではないのですが、医師に勧めれれば入院という言葉がこころに落とし込まれやすいです。

経営に敏感な病院程、ベッド稼働率100%にこだわっているでしょう。

高齢になればなるほど、仕事でお金を稼いでいる確立が低下しますので、自由が効きやすく医師に勧められると一旦入院を選ばれる方が増えます。

入院中は、食費や水光熱費も自宅生活より心配が大幅に減りますし、移動制限はあるものの安全性と快適性が高いです。

傷病による緊急度はありますが、ベッドが空いている時は入院に対するハードルが低くなります。複数の患者様に医師が入院を勧めれば、ベッドは埋まりやすくなります。

特に高齢になると疾患を持つ方や体力が低下する方が増えます。健康管理や検査の為に入院をすすめていくことは、他の年齢層より比較的たやすいといえます。

介護が必要な方であれば、老人保健施設を同一敷地内の同一法人で運営していれば、老人保健施設のベッドに空きがある場合そのまま入所をすすめることも可能です。

老人保健施設としても営業(施設がベッドを埋める為の行為)努力にかけるコストが大幅にダウンしますので、かみ合わせが良いです。

病院から老人保健施設に入所する方も入所料金も安く、リハビリがついており、病院に準じて医療的に手厚く情報も病院から提供されるのでメリットが大きいです。

老人施設は両輪で回っています。1つは人材、職員の数と質です。もう1つは入所者です。ともに施設運営をしていく上で頭を悩ませる大きな事柄です。

病院併設型の老人保健施設はその片輪である入所者について、大きなアドバンテージを得られる組み合わせです。

もちろん、もう一方の人材面でも医師・看護師のノウハウが蓄積されている分アドバンテージがあるといえます。

 

つまり、病院併設型の老人保健施設は、入所者を増やすという面において既に売りポイントを持っています。

単独型の老人保健施設にはない売りポイントです。単独型の老人保健施設は、入院から入所の流れをもっていないので(診療所規模ではこの流れを確立できるとはいえません)、別に施設の売りポイントを探す必要があります。

病院併設型の老人保健施設を持っている病院に入院する際には、そのまま老人保健施設に入所する流れがあるかもしれないと期待することもできます。

 

単独型の老人保健施設の特徴(売りポイント)については、次回ご紹介致します。

老人ホーム選び ~ 老人保健施設⑬ ~

老人保健施設(病院併設型)

 

 病院併設型老人保健施設とは、読んで字のごとく、病院の近く(同一敷地内)または同じ建物内に作られた老人保健施設です。

ここでいう病院は、入院できる病床(ベッド数)が20床以上のものを指す説明と思って下さい。病床19床以下の医院は診療所として区別させていただきます。

病院にはもともと医師がおり、看護師も多数在籍しています。複数診療科がある病院であれば医師・看護師の人数も飛躍的に増加していきます。

多くの病院では病院の大きさに応じて入院病床数も増加します。病院では治療が終了したら退院をすすめられます。病床数が多ければ多いほど退院者数も増加します。

退院者の中には、治療中に筋力が低下してしまい元生活していた場所に戻れない方もいらっしゃいます。また、入院が長引けば長引くほど診療報酬が減っていきますので、適宜退院をすすめる理由のひとつになります。

一方で、治療終了後も元生活していた場所に戻れない方が一定数でてきます。退院後元いた場所に戻れない方は、新しく生活できる場所を探さなければなりません。施設探しが始まります。

継続的な医療管理が必要な場合は、一般的な施設では受けにくい場合もあります。また、経済的に潤沢である保障もなく、金銭面で入所できないこともあります。

これを放っておくと、病院内に退院できない患者が溜まり、新しく患者様が入院できな状況が生まれる事でしょう。

こういった社会的な悪循環を解消する為に、老人保健施設を活用する仕組みを行政は作りました。

他施設にはない医療面で高度な人員基準、医師と多数の看護師を配置する、その代わり介護報酬は他施設より抜群に高いという施設形態の位置付け施設です。

自宅・施設の中継する施設として老人保健施設が位置付けられました。

 

病院はもともと医師・看護師が在籍ています。

老人保健施設を立てようとした時、ネックのひとつになるのが医師と看護師のマネジメントです。

もちろん、老人保健施設を設立するときに他の課題もあります。例えば、施設の建築や介護保険報酬への対応・職員集め・組織作りなどミッションは沢山あります。

しかし、他の事柄は似たような事を経験している人がある程度探せばいますし、努力したり調べてできない範疇ではありません。

医師・看護師については、仕事そのものが業務独占の為、新規事業発足にあたり独自色が強すぎ手を出しづらい面が強いです。

その面で病院の医師が老人保健施設を新規発足させるために尽力すれば、大きなハードルをひとつ下げることができます。

つまり、老人保健施設を発足するということは、医療に対するノウハウと権限がある人材が行うことが多いです。

病院が老人保健施設を発足するにあたって、親和性が高い業種といえるでしょう。

 

病院という基盤をもっており、退院者の行き先を決める上で老人保健施設を持っていた方がメリットが大きいです。

病院と老人保健施設は人員的な親和性も高く、病院が展開しやすい事業形態といえます。

次回は、病院が老人保健施設を開設する場合と老人保健施設単独で開設する場合では、どのような運営の違いが出やすいか寄稿致します。

老人ホーム選び ~ 老人保健施設⑪ ~

老人保健施設の人員基準

 

 支援相談員②

 

 支援相談員(以下相談員と表記)相談員の仕事は、誰の仕事か割り切れない仕事が振られやすいです。

施設の上位権限者は、他の仕事もこなすために、相談員に次々と自分の仕事を回すことが増えます。

支援相談員にグレーな仕事が入ってきやすい理由を知りたい方は、過去記事老人保健施設⑩をご参照ください。

 

 

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相談員の活躍は、すなわち施設の上位権限者の仕事を処理する仕事であり、施設の浮沈を決するといっても過言ではないです。

相談員の実力は、いろいろな仕事が入ってくるという土壌の中で養われます。

人が足りない時は現場の仕事、職員の人間関係調整、入所者様やご家族様の悩み事相談、施設によっては建物のメンテナンス系の調整などとどんな仕事でも入ってくる可能性があります。

これらの仕事をこなすには、施設の方針・風土・上位権限者と意思疎通ができていなければなりません。

信頼に足る仕事をするには、信頼を得る方向性を知らなければなりません。

それらの仕事をこなすうちに、相談員の実力は養われるのです。実力をつけたいのであれば、若いうちに苦労しながら相談員の仕事を経験するのはお勧めです。

施設の上位権限者の代理執行者としての立ち位置を確保する実力があれば、グレーの仕事は相談員に話しを通すようになります。

トラブルがあれば相談員へ話しを持って行く流れができるまで、相談員の苦労は並大抵ではありません。

 

入所者様の入退所ひとつの仕事をとっても、施設の入所率(ベッド稼働率)を左右します。

病院や居宅介護支援事業所に営業を行い、入所の話しがきたら入所判定にかけるため情報収集を行います。

情報収集の最中にも入所させるかどうか周囲の担当者に根回しを行います。

入所となったら入所中スムーズに生活を送ってもらう為に家族や本人に調整を行います。契約を取り交わし入所中のトラブルを回避できるように説明します。入所の時から退所時の話しをご家族様に通しておきます。

入所につながらなかったとしても、紹介して下さった病院の相談員・居宅介護支援事業所の介護支援専門員との関係性を継続できるように話しを取り持たなければなりません。

入所に当たって準備物品や金銭的負担の相談を行います。

退所の際には、入所者様が次に生活できる先の確保を行います。本人や家族の中にはずっと老人保健施設に居たいという人もいますが、無理な事は無理だと言い一旦退所してもらわなければなりません。

入退所が他施設より多い老人保健施設の相談員は、他施設の相談員より大変な代わりに得られる経験値が高いといえます。

稼働率を上手にコントロールできれば、大きな実績となり更なる役職へステップアップできる芽がでてきます。

 

たったひとつの仕事についてだけでも、営業・入退所に関するかなりの調整力を必要とします。

ですが営業・入退所は相談員のしごとの中でも軽い仕事です。なぜなら、入所率(稼働率)という数字で結果が図れる側面が強いからです。

本当に実力が試されるのは、各種調整において相手が我慢可能な範囲をはかり、何人も相手がいる中で目的地に話しを落とせるか、これが相談員のスキルといっても良いでしょう。

正直、明確な成功もなければ失敗もない仕事内容で関係調整をこなしていくことがもっとも困難な事でしょう。

人間関係のトラブルに下手に首を突っ込めば、自分自身が火の粉を被ることも多々あります。

 

優秀な上司の元で働ける相談員は、介護関係の仕事全般を見ることができ施設系の中でもっとも高い経験値を得ることができるでしょう。

老人保健施設の相談員の力は、施設そのものの力といっても過言ではないくらい非常に重要です。

ベテラン相談員は施設の内部事情を熟知しています。いろいろな人たちにもまれ続けています。立ち位置として各関係者に配慮する必要がある為、ご家族様や本人様だけの完全な見方につけるのが難しい相手です。

しかし、入所希望者にとって相談員に誠心誠意の付き合いをしたいと示すことは決してデメリットにならないでしょう。

ベテラン相談員は、人の意見を聞く上で、相手の所作から相談者の真意や真贋を見分ける観察眼を職業柄養っている人が多いです。

入所希望者(入所家族)は、相手がベテラン相談員である場合自分の置かれている実情を誠心誠意伝えることに専念した方がよいです。

老人ホーム選び ~ 老人保健施設⑩ ~

老人保健施設の人員基準

 

 支援相談員①

 

 老人保健施設の特徴と言えるのが、有能な支援相談員(以下相談員と表記)が育ちやすいという土壌です。

相談員の仕事は、元々これだという業務が策定されていません。

法的な老人保健施設の相談員の仕事の定義はあるのですが、相談員の仕事は多岐に渡るのが一般的です。ちなみに法律で定められた支援相談員の仕事は下記の通りです。

 

 ①入所者及び家族の処遇上の相談

 ②レクリエーション等の計画、指導

 ③市町村との連携

 ④ボランティアの指導

 

ということになっています。

ただ、この①~④の内容だけで仕事をしている相談員はまず見たことがありません。

誰の仕事かはっきりしないことを上司が相談員に依頼する事が多いです。

施設長の右腕として相談員が仕事を差配しているのをよく見かけます。

大きな施設になると総務課のような部署が生まれ、誰の仕事かはっきりしない事は総務課に回される事が多いのですが、中規模以下の施設だったり、発足して年数がたっていない施設は誰の仕事かわからないグレーな仕事は相談員に回されやすいです。

施設の上位権限者は、誰の仕事かわからなくても問題解決を迫られます。誰の仕事かわからないグレーな部分を全て上位権限者が一元的に行っていては、施設のマネジメントに支障がでます。

誰の仕事かわからないグレーな仕事を受けてくれる人が必要になります。介護支援専門員はケアプランを回す専門職。看護師は医療関係の仕事を回す人。介護士は現場を回す。理学療法士はリハビリ担当。

消去法で各職種を見ていくと、施設の上位権限者の雑事をこなしてくれる人は、相談員くらいになります。

雑事を任せているうちに、微妙な関係調整が発生する仕事を受けてくれる相談員の存在が重宝することに気がつきます。

そのうち上位権限者の代理執行のようなポジションに誰かいてくれれば助かると考えたとき、相談員が関係調整を仕事と位置付けられることが多いです。

もちろん、多職種であっても相談員以上に関係調整の仕事ができる人がいれば任せたくなるのですが、多職種には自分の専門分野が既に割り振られています。その専門分野プラスアルファでグレーな仕事を依頼するかどうかは考え方次第でしょう。

消去法でグレーな任務を受けやすいということは、重要な事です。

なぜなら、上位権限者になる程現場に入る率が減り、細かな仕事の段取りに気付きにくくなっていきます。

机上の空論やこうあるべきという論で仕事を組み立てる傾向が強くなります。

各職種の全ての仕事の段取りが分からない以上、分からないことそのものを受けてもらえる職種が欲しくなるのです。それが相談員です。消去法で相談員を選ぶのは、合理的な論理で組み立てた結果です。

老人ホーム選び ~ 老人保健施設⑨ ~

老人保健施設の人員基準

 

 看護師

 

看護師については、老人保健施設の特徴といっていいほど大きな項目です。

なぜなら、看護師の人数が多いからです。

入所定員100人未満の場合は、10人前後の看護師が在籍しています。

看護師約10人という人数は、施設の中では突出して多い人数です。

一般的な老人施設の看護師の配置基準人数は0人~1人です。

グループホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅には、看護師の必置基準がありません。看護師を施設に置こうが置いた看護師を0人にしようが施設の方針次第です。

特別養護老人ホーム・介護付き有料老人ホームは看護師1名以上(入所・入居者様の人数により配置人数が上がる)です。

※介護医療院は、老人保健施設より更に高い医師・看護師の配置基準です。介護医療院は、元々医療型老人保健施設介護療養型医療施設だったところがほとんどで、医療色が濃いので割愛いたします。

看護師の必置基準があると、それ以下の人数にへ基本的にできなくなるので、安心度は高まります。

その中でも、ほぼすべての施設で老人保健施設を上回る看護師の配置基準を求められる施設形態はありません。

それほど、高い医療が見込めるという事です。

 

施設で常勤の看護師が3人を超えると、施設医療における変革がおきる可能性が高まります。

常勤とは、1週間で平均5日・1日当たり8時間労働(週40時間)を行う人(夜勤やローテーション勤務でピッタリそうはならない場合、施設の規定で常勤の定義が異なる事があります)の事です。

 

看護師0人の施設の場合、ケアに医療的な知見を組み入れて生活を営む事は期待しない方が良いです。

介護系の経験で管理者になった人は、看護師やリハビリ職など他職種が混ざらず、介護職員だけで運用する方が職員のマネジメントは若干行いやすくなります。

一方で、介護職だけの組織文化では、介護職以外の知識や考え方が入りにくいので、体調管理や機能訓練のスキルアップは起きにくい土壌になります。

 

看護師1人の場合、看護師として業務している時間帯は、最大でも週5日間程度です。看護師がいない期間が1週間の内2日間は最低限あるということになります。

この場合、継続的な痰吸引や胃ろう・インスリン施注など毎日発生する医療を維持することは困難になります。毎日の医療サービスを利用者様は受けにくくなります。

また、看護師1人では看護師の経験した専門科以外は専門家の医師に所見から依頼する事になります。

医療の安定という側面ではまだまだ不安定です。

 

看護師が2人在籍している組織ではどのような看護師の動きになるかというと、2人とも最大週5日で日勤出社していたとしても、1週間を通して切れ目なく看護師を配置すると、看護師同士が直接会うのは1週間のうち3日だけ、残りの4日は1人勤務になります。

1人勤務が多い状態というのは、集団として統制がとることは難しい状態です。どちらかというと、お互いがお互いの仕事を否定しないように緩やかに調整する方が現実的な方法と言えます。

意見を交わしたとしても、理解納得・確認して行動する時間より、個人としての独自の判断で行動する時間の方が多くなります。

独自の判断を重んじなければならない空気感が、発展性の阻害要因になります。

 

真に切れ目ない医療と組織力を発揮できる最低人数は、常勤日勤専従看護師3人以上です。3人になると1週間を通して常に他の看護師と相談できる環境が整います。

できれば、4人・5人いると更に組織力が高まる人数になります。

ここで思い返すのは、老人保健施設以外の看護師の配置要件は0人~1人ということです。

0人~1人では医療的な発展・情報共有・組織力をくみ上げることを見込むことが困難です。

一方で、老人保健施設の看護師は最低10人前後の人数がいます(入所者100人に対して)。看護師の多様性を法律や実力で運用する医師もいます。

医療的な強さは様々な施設がある中でも群を抜いて高いといえるでしょう。