老人ホーム選び ~ 医療行為編 序章~

 老人ホームは、基本的に生活の場所です。生活を送る為に継続的に医療が必要なるという利用者様もいらっしゃいます。

一般的に老人ホームは生活の場、病院は治療の場と区切られています。

実際の生活では医療と生活はシームレスにつながっているのですが、今般の日本では入院は治療を行う、治療が終了したら介護の現場に場所が移るという流れができています。

何故そうなのか歴史を紐解きますと、今から数十年前、病院では社会的入院が社会問題になっていました。

家に帰るより、病院にいる方が家に帰るより安全である上に保険に入っていれば保険収入がある。

食事も水光熱費も安い安全な病院で、入院保険金を貰いながらなるべく粘って入院を長引かせるという社会問題が横行しました。

そういった、生活目的の入院患者が増えてベッドが埋まり、本当に危機にある人の入院が制限される慢性的な状況に陥りました。

顕著にこの問題が多いとされたのが高齢者層でした。慢性疾患を抱え、自宅に帰っても生産的な役割をおいにくく、家族や誰かの支援が必要になるがという人の比率が高かったからです。

できれば、病院で保険を貰いながら自宅の手を煩わせない。得が大きく損が少ない方法です。患者や患者家族にとって、目の前に困っている次の患者は見えないのですから。

この事象を差して【 社会的入院 】という言葉が生まれました。

社会的入院を長引かせれば、本来命の危機にある人の緊急的治療の妨げになっていしまう。

病院としても、今ほどでないにしても、本来目的にそぐわない入院が長引けば段々医療保険点数が減る。

なんとか一旦退院してもらいたくて、少しの間だけ自宅に返し、またすぐに入院をさせるというかけひきをしだすようになります。

事態を改善する為にも、医師会と国が社会的入院はダメだという医療制度に変革がおこりました。

 

 そして【 治療の場 】と【 生活の場 】を言語的に区別し、病院は治療の場であると定義づけました。

言葉で区別することで、治療が終了したらすぐに実生活に戻すべきだという認識がうまれました。

入院における点数も、入院が長くなれば病院の点数が削られて、病院経営にひびくという医療制度に変更されていきます。

病気や症状による違いはあるものの、最近の価値観では早く治療の場は離れて実生活に戻した方が良いという流れになっているのは著明な方向性です。

 

 この中には、生活を続けていく上で医療が必要です。しかし、この治療の場の定義では治療の場にいるべき人と生活の場にいるべき人の間のグレーゾーンの方たちが存在しています。

例えば、胃ろう・痰吸引・在宅酸素・人工肛門・真皮にとどく褥瘡(床ずれ)・施注(注射)が必要・点滴・感染症など、日本では医師・看護師でないと取り扱う事ができない医療にも関わらず、慢性的な状況になり治療としての改善見込みが減少した方たちです。

分類上、この方たちは、医療の場と分類される時と生活の場と分類される時と状況によって分類がまちまちです。

医療と生活は本来シームレスであり、言語的に分割したとしても、分割できない部分が存在しています。

医療の場に居続けることができれば問題ないのですが、この方たちを生活の場に戻すときに必要になるのが、施設(在宅)における医療制度です。

施設(在宅)医療は、治療の場と生活の場という言葉をつなぐ存在です。生活の場で医療を展開するには、ある程度医療行為を行う土台が整っていないと行う事はできません。

 

次回は、医療行為を行う施設について書いて行きます。