老人ホーム選び ~ 医療行為 番外編② ~

 介護保険マンパワー解消が目的のひとつとして設計されたにも関わらず、介護職場の人材難は今も解消されていません。

福祉の市場、特に老人福祉の市場が今後儲かるというイメージ戦略が成功した半面、人材確保に失敗した介護保険制度は、福祉施設が乱立するが人は以前より更に薄まるという道を辿っています。

その結果、地域では人材難から施設や福祉事業者の数を広げきれず、お題目を達成していれば救えるかもしれない人を介護難民としてタヒへ追い込んでしまったということも間違いない事でしょう。

介護保険制度は、失敗はしなかったが成功したともいえません。最近は介護保険制度の指揮者が不在になり、制度の細部が複雑化しすぎて利用者はおろか、事業者にも理解できない難解さになりつつあります。

大局的な目的地を見据えることができずに、小手先の小さな変化を繰り返し複雑になり迷走している印象です。

 

介護保険制度の初期に掲げられたマンパワー解消は確実に失敗しました。拡張する市場、薄まる人材、この環境のなかでどのような管理者が醸成されたかというと、ずばり経験不足・実力不足の管理者・運営者が生まれました。

オーナーが施設や事業所を作るも十分な経験をもった運営者候補がおらず、やむを得ず経験なき者を管理者につけるケースが多発しました。

福祉に参入するもっとも大きな原動力になった業種は、土木・建築・インフラ関係などの他業種参入でした。また、経験なく0から起業する個人も増加しました。

もともと福祉・介護は生活の延長線上の仕事と捉えられ、最初から高度な技量など必要ない業種との認識もありましたから、参入のしやすさという点でも未経験からの参入に拍車をかけました。

例えば、ITであればwebに関する知識やデザインに関する知識・コーディングに関する知識など、それなりに努力した事前勉強が必要になります。

介護にはそういったハードルは少ないと捉えられました。私も事実、事前勉強へのハードルは他業種より低いと思います。

これが施設・事業経営のマネジメントのしにくさと質の低下に一層の拍車をかけます。

介護保険以前の措置時代を知っている介護者にとって、介護保険制度が導入されてケアや介護への取り組みの質が向上したとは言えないと思っている人が多いです。

市場の急拡大・素人経営者の増加・素人介護職員の増加・指導職員の相対的現象による混乱が原因です。

介護保険制度は、結果的に施設・事業者数のみ増やす方向へ偏重してしまい、ひずみが生まれました。

 

 施設増加に人材が追い付かない状況の中、経験不足の素人管理者が続発する業種になってしまいました。

人を扱う職種にも関わらず、職員の扱い方も利用者の扱い方も知らない、現場をやったことがない管理者・運営者がたくさん生まれました。

行政もほとんどの福祉事業形態に管理者の資格要件や経験年数要件を設けませんでした。

適性を審査するシステムも設けず、2025年問題の為に施設・事業者数を確保したいという方向にどこもかしこも流れていきました。